🎮 全員に"正義"がある三國志 — 真・三國無双ORIGINSの話

この記事はストーリーのネタバレを含みます。DLC「夢幻の四英傑」の内容にも触れています。未プレイの方はご注意ください。

僕は三國無双が好きです。3、4、5、6、7。8はやらなかったけど、あとOROCHIシリーズと、コラボだけどドラクエヒーローズなど。かれこれ結構長い付き合いになる。

ORIGINSも「好きなシリーズだし、やりたいな」くらいの温度感で買った。いつもの無双の延長線上。たぶん面白いだろうな、くらいの期待値。

結果、いい意味で裏切られました。

ゲームとしての進化もあるんだけど、一番刺さったのはストーリーですね。「敵」として処理されてきた人間たちに、ちゃんと正義が見えた。それが今作の一番の変化だと思う。アクションゲームとしてのプレイ感もさることながら、個人的にストーリーに大きく感動してしまったので、感想を書いてみることにした。

パリィが変えた”無双の手触り”

アクションの話を先にしておくと、今作はパリィと回避が入ったことで戦闘の手触りがだいぶ変わりましたね。8にはあったのかな?わかりませんが。

最近のゲームって、ちょっと二極化してる気がしませんか。カジュアルなファミリーゲームか、ソウル系みたいに重厚で歯ごたえのあるやつか。その中間がなかなかない。

そこに対して戦略がついた気がします。単に敵のHPが増えて攻撃力が上がるだけの難易度じゃなくて、ちゃんと駆け引きがある。武将戦でパリィを決めたときの気持ちよさ、これは旧作にはなかった感覚です。

でも、真無双乱舞で数百人バーっとなぎ倒す快感はそのまま残ってる。変えるところは変えて、残すところは残す。このバランスが絶妙だなと。

旧作をやってた人間からすると、「ちゃんと戦ってる感」が出たのが一番大きい。ボタン連打が中心でももちろん楽しいんだけど、そこにわかりやすく判断が乗るようになった感じ。アクションゲームとしての爽快感として、かなり完成度が高いなと思っています。

真無双乱舞がめちゃきもちい

「敵」だったはずの人間に正義が見えた

ここからが本題。

三國無双って、最初に触れるのは大体義勇軍(劉備サイド)の視点じゃないですか。劉備・関羽・張飛の三兄弟が立ち上がって、黄巾賊を倒し、董卓を倒し、天下を目指す。プレイヤーもその目線で三国志を追いかける。

だから張角は「チュートリアルで倒す奇術師」だし、董卓は「序盤の大ボス」。彼らがなぜ戦っているのかなんて、あまり掘り下げられてこなかった。

今作はそこが違う。劉備サイドの武将にも掘り下げはあるんだけど、今作で一番刺さったのは、これまで”敵”として処理されていた武将たちの描かれ方だった(呂布は昔から少し別枠だけど)。

張角 — 信じても救われない時代に立ち向かった人

旧作の張角は「なんか妖術使ってくるおじさん」だった。基本的には黄巾の乱はチュートリアル扱いで、黄巾決戦が序盤の1つ目の山。でも全体としてはサクッと終わる。

これがORIGINSでは全然違う。張角は困窮する民を救いたくて太平道を興した人間として描かれている。兵士たちからは「温かな手に救われた」と慕われていて、崇高な理想を掲げて世の中を根本から変えようとしていた。

でも、その志が末端まで正しく届かなかった。飢えた民にとっては「奪わなければ死ぬ」が現実で、理想なんて腹の足しにならない。黄巾は暴走し、張角は止められなかった。

信じても救われない時代の苦しさ。道を誤ったと知りながら、それでも天命に抗おうとする姿。正直、かっこいいなって思ってしまった。根本から覆しにいこうとしていたんだろうけど、道のりが長すぎたんですよね。

終わってから改めてDLCの最初のムービーを見ると、このシーンが良すぎる

旧作ではシュッと終わっていた黄巾の乱が、今作ではじっくり1章分を使って丁寧に描かれている。この時点で、ORIGINSの本気度が伝わってくる。ストーリー全体が赤壁の戦いまでなので、その分分厚くかけたのもあると思う。

だからこそ、赤壁以降もぜひ作って欲しい。馬超も甘寧も、赤壁以降に本当の活躍をするキャラで、あの面子を ORIGINS の描き方で見たい気持ちが強い。

董卓 — 力なき理想は無力だと知っていた男

続いて董卓。旧作における董卓は明確に「酒池肉林の暴君」だった。宴会、美女、暴力。わかりやすい悪役として登場しています。

ORIGINSの董卓は全く違う人間になっている。漢王朝の腐敗を「死者が生者を喰らう国」と見抜き、このまま衰退していく国に理想論を語っても何も変わらないと悟っている。力がないと自分の意志さえ貫き通せない。なぜなら戦国だから。そんな思想を持っている。

「力無き愛は無力である」に近い思想ですよね。理想を掲げるだけでは誰も救えない。実力がなければ淘汰される。だから圧倒的な力で上に立つことで争いを終わらせようとした。

ただし、愛なき力は暴力でもある。まさに力愛不二。董卓の行動が正しいかどうかは正直わからない。でも、4人の中で一番現実を直視している人間だなとは思う。理想論に媚びることなく、自分の頭で考えて、自分なりの答えを出している。旧作の享楽的な暴君とは完全に別人だった。

宴席への招待すら断るし、呂布に倒される時も潔く受け入れる。「この人なりの平和の形がある」と思えたのは、シリーズで初めてだった。

DLC「夢幻の四英傑」で見えたIF

本編だけでも十分なんだけど、DLC「夢幻の四英傑」がこのテーマをさらに押し進めている。

コンセプトは「もし主人公が彼らに肩入れしていたら」。張角・董卓・袁紹・呂布の4人について、本編で退場した彼らのIFの物語が描かれる。

張角編では、本編で対決する直前に主人公に救われて、暴走した黄巾党を改心させようとする展開になる。本編で「止められなかった」張角が、もう一度やり直す機会を得る。これだけで泣きそう。冒頭から泣きそう。エモ〜〜〜〜〜〜って感じです。

袁紹 — 根っこから人を信じる男

旧作の袁紹は、正直「家柄だけのおぼっちゃん」だった。名家たる袁家の話ばかりで、その権威で政治を動かそうとしているだけ。連合軍の盟主なのに存在感が薄い。

ORIGINSではその印象がだいぶ変わる。「名門であること」に本人が一番苦しんでいて、叔父の袁隗を失った重圧や「権威を振りかざすだけの愚者に堕ちてはならぬ」と自分を戒めるシーンがある。

でも袁紹が一番変わったと思うのは、根っこの部分。この人は根本的に人を信じて、人に期待するスタンスなんですよね。それがDLCのIFで特に強く出ていると感じます。官渡で幼馴染の曹操を破った後、負けた曹操を斬らずに「共に国のために尽くそう」と手を差し伸べる。旧作の袁紹からは想像できない寛大さ。

呂布 — 自分の価値が「武」でしかないことへの哀愁

呂布は旧作でも人気キャラだったけど、描かれ方は「裏切りの武人」が中心だった。義父を殺し、主を何度も変える。強いけど信用できない男。旧作では貂蝉との関係が深く描かれるタイミングもあったけど、今作ではそこも薄い。

ORIGINSの呂布からは、自分の価値が自他ともに「武」でしかないことへの哀愁が見える気がする。武のために雇われ、恐れられ、戦うことでしか存在を示せない。呂布と貂蝉のタッグもあるにはあるんだけど、そこに至るストーリーは比較的あっさりしていて、DLCの呂布編でも貂蝉が中心に据えられることはなかった。

その代わりに見えてくるのが「自分の存在の証明」というテーマ。4人の中で、ある意味一番深いところに踏み込んでいるのは呂布かもしれない。力を持つことで居場所を作った董卓と、力そのものが居場所になってしまった呂布。似ているようで全然違うというか、そんな感じ。


どのシナリオも「この人なりに必死に生きた結果」が描かれている。あと、DLCでは全シナリオ通して曹操がいい味を出しているんですよ。冷徹な男に見えるけど、どのIFでも彼の人間らしさが垣間見える。四英傑の物語なんだけど、裏MVPは曹操かもしれない。

全員に正義がある。だから選択が重い。DLCまでやると、誰の味方にもなりたくなるし、誰とも戦いたくなくなる。

“ORIGINS”という名前

ナンバリングを外して「ORIGINS」と名乗った意味が、プレイし終わってやっとわかった気がする。

三国志の原点って、結局は「それぞれの正義がぶつかり合った時代」だったんですよね。勧善懲悪じゃない。全員が自分なりの平和を求めていて、誰も間違ってはいなかった。それをゲームとして体験させてくれたのが、今作の一番の価値だと思う。

いままでシリーズ通して遊んできて、「無双ってこういうゲームだよな」と思っていた。それがいい意味で壊された。戦闘が変わり、ストーリーの見え方も変わった。

好きなシリーズだからこそ、こういう裏切り方をされると嬉しくなってしまう。次回作が怖いですね。本当に赤壁の戦い以降、頼みます。