この記事はAkatsuki Advent Calendar 2020 7日目の記事です。
こんにちは。あでぃです。株式会社アカツキでエンジニアやエンジニアリングにまつわる雑務を様々行っています。直近はエンジニアリングマネージャーとして活動しています。
僕の2020年の大きなトピックとして、チーム異動がありました。そしてこれは運用プロダクトのエンジニアから新規開発のエンジニアリングマネージャーへの転換で、僕にとっては大きな変化でした。
以前からマネジメント及び開発手法には強い関心があったのですが、この度専属(?)でマネジメントに携わる人になったわけです。
さて、エンジニアリングマネージャーとして良いプロダクトにしていくために!ということを考えると、まずは正確にチームの状況を把握する必要があると思います。そのために、まずはメンバー対話するという場面が圧倒的に多くなります。状況を把握するということは、こういった対話の中で「話を聞く・まとめる・考える」を何度も繰り返し、その中でいかに自分の偏見を混ぜないで事実をまとめることができるかということだと思っています。
これはコーディングをするときに、まずはちゃんとログなどを見て推測ではなく正確に動作を把握しましょう。などと言うのを同じことだと考えています。その先にある解決は解決ができれば偏見の塊であっても構わない(できれば負債はないと良いです)のですが、そのためにまず事実を知る。ということは偏見なく行いたいものです。
今日は様々な話を聞きながらふと調べたり感じたりすることが多かった、アンコンシャスバイアスというものについてまとめたいと思います。
アンコンシャスバイアスとは
アンコンシャスバイアス(unconscious bias)というのは直訳で「無意識の偏見」です。つまり、自分自身でも気づいていないうちに、ものの捉え方などに偏見が含まれてしまうことです。認知の歪み、と呼ばれるものに近いと思います。
近年では『多様性』の注目からこのアンコンシャスバイアスが注目されてきています。これは人の見た目や経験などから得る印象にも同じような物があるためです。女性なので受付業務をお願いする。権力がある人の判断は正しいと感じる。身体が大きいので心身ともにタフそう。とか。
このバイアスを測定するテストであるIAT(Implicit Association Test)もいくらかニュースで見られるようになってきています。
上記の印象から得るに、このアンコンシャスバイアスというものはなくならないのだと思っています。
だからこそ少しでもその存在を知り、ふとしたときに立ち止まるきっかけになれば良いのではないかと考えています。
アンコンシャスバイアスの例
日常にあるバイアスの例です。
聞いたことがあるものも多くあるかもしれません。
確証バイアス
自信の仮説や信念を検証する際にそれを強め支持する情報ばかり集め、反証するものを収集しなかったり無視したりすることです。
自分の意見を強めるために同じ意見を持っているであろう人ばかりに話を聞くとか、情報を集めるときにも結論ありきで収集するとか。例えば、あるものがAであるかどうかを調べたい(自分はA派)際に「〇〇 A」と調べたら同調する情報が集まってくる。とか。そこまでいくつも違うって説を見ていても、ふと一件だけ自分の考えと同じものを見つけてしまって「ほらやっぱり!!」ってなるやつです。
4枚カード問題(ウェイソン選択課題)が有名な実験です。
4枚のカードがテーブルに置かれている。それぞれのカードは片面には数字が書かれ、もう片面には色が塗られているものであり、3・8・赤色・茶色が見えている状態である。このとき「カードの片面に偶数が書かれているならば、その裏面は赤い」という仮説を確かめるためにひっくり返す必要があるカードはどれか?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%B3%E9%81%B8%E6%8A%9E%E8%AA%B2%E9%A1%8C
このときに、ロジックとして正しいのは「8と茶」だが「8と赤」と答える人が一定数居るといいます。正しいことを確認して満足してしまう(反証を見ない)というものです。
正常性バイアス
人が自分にとって都合の悪い情報を過小評価してしまうものです。なにか緊急事態が起きていたとしても、目の前の日常は普段と同じ(正常な状態)だと思い込むことです。
なんか問題起きてるけど、自分に限って大丈夫だろう。というやつですね。このコロナ禍の世の中で存分に見ている気もします。実際に過去の大規模な自然災害における逃げ遅れの例などが研究されています。
会社の話だと「うちの会社は大丈夫」みたいな話がされるときは「おや?」と思えるかもしれません。
コミットメントのエスカレーション
事象に対するマイナス情報があるにも関わらず、過去の自分の意思決定に引きづられてしまうことです。つまり、サンクコストを意識しすぎて意思決定が正常に行えないことを表します。
過去の判断が間違っていたということを認めないために、誤りをその判断自体ではない別のものに被せようとしている。という見方もできると思います。まずはサンクコストにとらわれてしまっていないか?を常に意識していたいものです。
自己奉仕バイアス
成功は自分自身の能力のおかげ、失敗は自分ではどうしようもなかった外部要因のせい。というものです。
人が評価されるのは運がいいから。自分が評価されたのは頑張ったから。頑張ったのに評価されてないのはプロジェクトや評価者のせい。と思い込みやすい。特にマネージャーとなると目標設定に携わることが増えて、非常に耳が痛い話であります。最近は、自分の内側で制御できる目標を置くことが大切であるといくつもの目標設定面談で意識して話しています(自分のことを棚に上げながら)。
近い認知バイアスにダニング=クルーガー効果というものもあります。
インポスター症候群
自分を過小評価してしまうものです。自身に対する良い評価に対して「本当は自分にそんな実力ないのにこんなに評価されてしまい、周囲を欺いているように感じる」と思ってしまっているというものです。まさしく Imposter=詐欺師 ですね。
これは逆に目標設定される側に働いてしまうバイアスですね。自分がされている評価について敏感なため、自分の上司や監督係の求める答えを察知して伝えることが出来てしまう。それがまた評価されてしまうため自身が周囲を欺いている偽物であるという感情を強めてしまう。本当にすごいと思っているよって感情を心から素直にマネージャーとして伝えるのって難しいですね。立場が消えないですしね。なんか自分で書いてて頭が痛くなってきました。
解決策?
先に書いたとおり、根本的に解消することは無いのでしょう。これが人間の機能なので、これをなくしきるには人間でなくなるしかないのではないかと。しかしこれが自分にとって不都合だと思うならば、その不都合な影響を限りなく小さく出来るように行動するのが良いのかなと思いました。
例えばこれを自分の気持ちで解消したい!と思うならば、身の回りの出来事に関して「普通だったらこうじゃないか」とか「常識的にこうでしょ」とか思うことがあったら、その時一歩立ち止まって考えて見ても良いのかもしれません。果たして主語が変わっても普通か?常識の根拠はどこだろう?とか。
または、バイアスにかかっている状況は往々にして盲目的であるので、こういったことに速やかに気づための対策を取るのも良いと思います。対策の中でも、とりわけ人と対話をすること。やはりこれが大事なんだろうと考えているし、僕にとっては確度高く解消できる気がしています。対話により偏見を知り、対話により偏見を取り除いていくということです。おもしろいですね。僕は今チームのメンバーや社内のメンバー複数人と定期的な(人によって1〜4回/月)1on1の機会がありますが、先輩後輩年齢関係なく、どの話も非常に学びがあるなぁと思えていて嬉しいです。非常に運が良く、恵まれている。
まとめ
- 人間には知らず知らずのうちに、自分でも気付かないアンコンシャスバイアスという無意識の偏見が存在する
- アンコンシャスバイアスは何気なく行う日々の行動に現れ、無意識的に瞬時に行われる
- チームを良い方向へ、多様性を認めながら進めるためにも、アンコンシャスバイアスの存在に気づきうまく付き合うことが大事
チームが上手く動いていない原因を紐解いていくと、事実とその周辺にある偏見に気づくものです。そのときに自分と向き合えば向き合うほど基本的には辛くなるのですが、その先チームとしては良い形になると信じて、僕は今新規開発に励んでいます。
できるだけたくさんの人と話したいですね。これを見ている方でも、似たような悩みを持つ方でも、ぜひ一緒にお話しましょう。リモート飲みなんていかがでしょう。
そしていつか、今僕が扱っているものがエピソードとして語れる時が来たら、そのときにはこの続編を書きますw